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横浜市寿地区の診療所見学をした4年生の学生さんの報告です!

学生の活動
総合診療
2024/12/12

『寿町での診療所見学を終えて』

かねてから興味のあった、健康格差を中心とした社会問題を考えるきっかけとして、11月末に2日間の日程で横浜市の寿町に伺いました。今回は地域家庭医療学講座の金子惇先生のお計らいで、横浜市寿町健康福祉交流センター診療所の見学を始め、ホームレスの方に向けた夜回りや地区内での炊き出しを見学させて頂いたり、支援団体の方に地区内を案内して頂いたりと、非常に多くの現場を実際に見て学ぶことが出来ました。
お忙しい中見学を受け入れて下さった皆様に、この場を借りてお礼申し上げます。
横浜市寿地区

この町での経験すべては、多くを考えさせられるものでした。我々が考える最善策や最善の治療が、必ずしも患者さんの考えに一致しないということ。だからこそ、患者さんの考えを知ろうとする姿勢が重要であること。また、経済状況や調理環境、生まれ育った環境など、診察室では見えない患者さんの背景に、健康に直結する要因が隠れていること。そして、経済面や制度上の制約の中で治療を提供しなくてはならないということ。そういった課題や難しさを身をもって学ぶことができたのは、今回の見学の収穫のひとつだと感じます。

しかし、そういった課題は寿町に特有の問題ではないのだとも思います。この町の特性ゆえに、そういった局面が分かりやすく存在しているのであって、これは寿町に限った話ではないはずだと。
例えば、一般的な診療所で一般的な患者さんを相手にしている時に、健康の社会的決定要因に目を向けることは少ないのかもしれません。ただ、それを意識する重要性はどこの町であっても変わらないはずです。今回の見学は、そういった基本的なことを考えるきっかけを与えてくれました。
そして見学を通して、診療所のスタッフさんやNPOの方々、行政の方々など、町に関わる方々が皆生き生きと仕事をされていた点が印象的でした。また、それは住民の方々も同様です。住民の方々は決して「支援される側」ではなく、それぞれに人生があり、考えがあり、生き生きと生活されている方々でした。単に病気を治すだけではなく、そんな住民の方々の生活を支える、医療の力を見せて頂いたと感じています。
最後に、診療所の看護師さんにおすすめ頂いた書籍、東畑開人「雨の日の心理学(角川書店)」のまえがきにはこんな言葉がありました。「こころのケアははじめるものではなくて、はじまってしまうものである。つまり、自主的に、計画的に、よく考えて契約書にサインしてから開始するものではなく、受け身的に、期せずして、否が応でも巻き込まれてしまうものです。(中略)どうしてそうなったのか、なにをすればいいのか、これからどうなるのか、全然わからない。でも、雨が降っていて、彼らのこころがびしょ濡れになっていることだけはわかります。(中略)こういうことがどんな人の身の上にも起こります。人生には、こころのケアがはじまってしまうときがある。」
福祉や医療もこれに似たところがあるのだと思います。誰もが突然の困難に陥る可能性があるからこそ、セーフティネットは必要なのだと。そして、医療はそういった困難に対する一助になりうると。そんな、たくさんの気づきを与えてくれた2日間でした。
医学科4年 尼野圭人

 
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【マナブことぶき~横浜市寿地区でプライマリ・ケアを学ぶ~】
横浜市寿地区とは…
東京の山谷、大阪の釜ヶ崎とならぶ日雇い労働者の街として知られていますが、現在では住民は高齢化して福祉ニーズの高いまちに変化してきています。
200m×300mの比較的狭い地域に簡易宿泊所が110 軒以上軒を連ね、約5,300人が暮らしているこの街では、かかりやすさ、診療の幅広さ、他の医療機関と連携したケアなど、プライマリ・ケアが求められる場面が多く、新しいプライマリ・ケアに出会える場所です。

横浜市寿町健康福祉交流センターでは、医学生・研修生や医療者の方々に向けて都市部のプライマリ・ケアを体験いただける研修プログラムを実施しています。
このような方が研修の対象です
 ■都市型プライマリ・ケアの現場をみたい方
 ■健康の社会的決定因子(SDH)を学びたい方
 ■医学生 臨床実習(~2日間)
 ■初期臨床研修医 地域医療実習(~4週間)
 ■総合診療専門医プログラム 総合診療Ⅱ研修
研修スケジュール例
ご関心のある方は、ご相談ください!

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