BLOG教えて! 家庭医療 Blog

ミシガン大学で実習をした6年生の学生さんの体験談です!<partⅢ>

学生の活動
2024/7/9
ミシガン大学家庭医療科 実習報告
私は、米国のミシガン大学にて、「ミシガン大学日本家庭医療健康プログラム」を通じて家庭医療の実習を2週間させていただいた。実習はミシガン州に点在する大学付属のクリニックで行い、日本人患者さんのために日本語で医療を提供する場面にも多く遭遇した。大学キャンパスは、ミシガン州の州都アナーバーに位置している。アナーバーは大学中心の活気ある街であり治安も良く、この近辺は医療システムも含めて、日本人にとって安心できる環境であった。
基本的な実習内容としては日本人医師の外来見学で、通常の診療に加え、スポーツや手技など先生各々のスペシャリティーに合わせた外来を拝見することができた。また、現地のカンファレンスにも参加し、レジデントが自身のプログラムや働き方について提言を行う場面もあり、その主体的な取り組みが非常に興味深く感じた。

最も印象に残っていることは、日本と米国の医療制度や家庭医の役割の違いについてである。米国では「PCP : Primary Care Provider (かかりつけ医)」の制度が確立されており、基本的に患者さんはまずPCPのもとを訪れ、必要があれば専門医へ紹介という医療の流れになっている。幅広い患者・疾患を診るということは同様であったが、米国ではPCPの外来患者さんの多くは定期のヘルスケアメンテナンスのために来院し、新規の方が少ない点が特徴的であった。ヘルスケアメンテナンスは患者さんが抱える身体的、精神的、社会的問題を定期的にチェックすることで健康の増進を図っており、長い時間をかけて行っていた。これは患者さんの健康増進、疾患予防において非常に有用な時間であると感じた。風邪など急性疾患の場合は、Urgent Careを行うクリニックに向かうことが多く、日本とは異なる役割分担がみられた。今回の実習を経て、米国の医療制度や家庭医の役割の良さも感じたが、必ずしも日本が欧米のやり方と一緒にする必要はないと考えている。日本では「かかりつけ医」という概念がまだあまり浸透しておらず、保険や金銭的な面など医療システム自体が異なるため、今後日本に適した形で「家庭医」の存在が広がっていくことに期待したい。

実習を通じて感じた課題は、英語のコミュニケーション能力である。実習は英語と日本語の半々であったので医学知識に関する理解は十分できた。特に、自分はミシガンの2週前からナッシュビルで実習を行っており、スポーツや整形外科的な疾患に関する問診になると比較的英語についていけた。しかし、日常会話や他の内容の会話になると理解が追いつかないことが多かった。これはネイティブスピーカーの話すスピードやスラングへの慣れが全く足りないことが原因であり、コミュニケーションの難しさを改めて痛感した2週間であった。言語をマスターすることは、診察はもちろん、他の医療従事者との円滑なコミュニケーションにおいて重要であり、より良い医療を提供するために必要不可欠である。今回の反省を生かして、今後はオンライン教材などを活用し、ネイティブの英語に触れる機会を増やしていきたい。

また、実習中の先生とのディスカッションを通じて、疾患の知識、身体診察の手法や臨床推論についてなど知らないことの多さを痛感した。改めて家庭医の診療範囲の広さを実感し、今後の臨床に向けて座学から臨床へスイッチするトレーニングをしっかり積んでいきたいと、大変刺激になった。加えて、現地の日本人先生ともお話しする中で臨床留学のアドバイスをいただく機会にも恵まれ、将来の自身の進路について考えるきっかけにもなった。実習を通じて学んだことは多く、今後医師となる上で、成長する非常に貴重な機会となった。
医学部医学科6年 山下 裕人

カレンダー

最近の記事

PAGE
TOP